なぜAITuberに興味を持っているのか
最近AITuberに興味があるのだが、なぜ興味を持ったのか忘れないうちに記録しておく。
厳密にはAIペルソナやAI人格に興味があり、YouTuber活動自体には興味はない。ただ、これ界隈で日本で現在最も個人・企業双方で活発なのがAITuber界隈なのでそこも含めてウォッチしている。
超かぐや姫とインターネット
SNSで話題だったので興味を持ち、2月下旬に劇場でも公開された超かぐや姫を観たのだが、これが巷では好評なのに対して自分は全く面白さが理解できなかった。これは自分のSNSのタイムラインが偏ってただけなのかもしれないが、劇場公開直後は作品に対する好意的な意見しか見かけなかったため、非常にショックだった。それは単に作品が自分にあわないということに対してではなく「こういった作品がもてはやされるようなインターネットになってしまったんだ」ということだった。
そもそも超かぐや姫を観る前からうっすらと近年のインターネット(≒SNS)の雰囲気に不快感があったし、VTuber界隈をウォッチしているくせに「推し」という概念は理解できないし、別に「俺(たち)が本当のインターネットだ」みたいなことを言いたいわけではないのだが、そういった居心地の悪さがどこからやってくるものだったのかを「超かぐや姫に熱狂している人たち」は私に教えてくれた。
OpenClawに湖畔のコテージの夢を見る
そういった経緯があり、以前からSNSから離れて生活したいという気持ちがあったが、どうしても情報収集であったりもしくはそれは建前で単純に中毒だったのかSNSからは離れられないでいたが、いよいよ自分の居場所はここではないと悟って隠居したいという思いが強くなった。
同時期にOpenClawを触っていたところ、IDENTITY.mdやSOUL.mdといったAIエージェントにペルソナを付与する仕組みと出会い、これを仲介役にすれば自分が直接インターネットとの接点を持たなくて良くなる世界が作れるんじゃないか。と思った。さらにその仲介役が自分好みのキャラにできる。こんなに嬉しいことはない。
AIペルソナの理想と現実
そこからOpenClawやその他派生実装を観たり自分で実装、いわゆるハーネスを考えたりする時間が続いた。OpenClawはLLMの呼び出しを多段で行ったりすることはできず、基本的には1つのLLM呼び出しにユーザーの質問とAGENTS.mdとペルソナファイル(IDENTITY.md/SOUL.md)と記憶(MEMORY.mdなど)をContextとして与えて出力させるという方式であり、それはインターネットから情報を取得させたり、コードを書かせたりといった実用用途では何の問題も無いが、キャラ/人格っぽく振る舞わせるためには物足りない。そのためいくつか寄り道しつつ、結果的にはまずは実用ではなく、雑談という入出力で期待したペルソナを発揮できないか考えることになった。
しかし、自分はLLMの技術的な専門家ではないので推測だが、現在の高性能モデルは軒並み実用性に特化して学習されているためか、付け焼き刃のPrompt Engineeringではその問題解決方向に寄ってしまうことを抑えられなかった。few-shotで多少は矯正することはできるがそれでも限定的で、試行錯誤しているうちにどうしてもLLMの出力を「コントロールできてる感」を得られず暗中模索することに疲弊してしまった。
さらに、あれこれやっているうちに「面白さ」に固執してしまい、当初の「仲介役」としての役割に面白さや雑談適正が必要なのかという「自分が何が欲しいのか分からない」という状態にも陥ってしまった。
AITuberと作り手を観察する
そこで一度手を止め、じっくり情報収集と学習をして自分の知識を増やすことにした。その上で実装過程で存在を把握していたAITuberに目を付け、運用者たちやそのコミュニティがどういった状態なのかを観察した結果、以下の洞察を得た。
- キャラをどう作り込むかということより、YouTubeで配信活動が行えるか、という話題が多い
- 実際配信を見てみると、技術努力は感じるが面白いとは感じなかった
- ただし、これは人間も一緒だからAITuberが特別つまらないとは思わない
どうしてもAITuberというのは単なるチャットボットとは違い「配信をする」ために実装しないといけないものが多い。コーディングエージェントによって個人でも時間をかければ実装できてしまうので、「面白さ」のような見えないものを作り込む前に(エンタメにおける)枝葉末節に時間をかけて満足してしまうという傾向が見えた。
念のため言っておくが、これは既存のAITuber制作者を批判したいのではなく、あくまでも自分の期待と一致しなかったということを言っているので気を悪くしないでほしい。また、「面白さ」というのは実用性との対比としての用語なのでAIに笑いを求めているとかそういうことではない。
自分はAIペルソナに配信させることには興味はないので、その分「面白さ」であるとか「LLMの出力をエンタメ方向でコントロールする」といった方向を追求し界隈に貢献できる可能性があると感じている。多様な興味を持った人材が集まって専門性を特化させていくことによるメリットがある。
AITuberの未来予想図
AITuberは、人間(VTuberなど)と同じ土俵に立つ必要は無いと思っていて、まずAIというのは同じ存在が並列で存在・動作できるというのが人間と比較したときに覆せない差別化点なのでそれを活かすべきだと思う。ただ、愚直にそうするとその存在に対する希少性が失われることになる。そして希少性が失われると人々からの興味関心、もっと言うとスパチャしてその人の注目を得たい、みたいな欲望を得られなくなるのではないかと考えている。そうするとAITuberは蛇口をひねったら出てくる水のようにインフラ化してしまい、人間と同じような収益構造は取れなくなってしまう。
ゲームをやるのも最終的には高度化するとCPU/チート/TASと区別が付かなくなるのでゲームを上手くなるという方向では発展余地がないのではと思っている。特に既存のオンラインゲームはAIは上手い下手に限らず参加すること自体に問題があるだろう。
Neuro-samaやShizuku AIのような存在についても現在はいわゆる「マスター」とのセットで注目を得ていると思っていて、結局は人間なしでは人間の興味を得られないという点ではVTuberの亜種なのではないかと考えている。VTuberの企画でもAIを使ったものは受け入れられているので、まだ技術的には人間とセットじゃないとダメだということでAITuberの会社がそういう方向でビジネスを成り立たせようとする世界線もあるのではないかと思っている。AITuberの会社ではなく、VTuber+AIの会社としてVTuber業界に入っていくみたいな。これが「VTuber四天王」の再来にならないことを願う。
また、現代のエンタメ文化は「誰が言ったか」のような権威主義的な色が濃くなっていると思うので、作曲家(ボカロPとか)やイラストレータのような他業種のインフルエンサーがYouTubeに進出するためにAITuberとタッグを組む、とか。
AITuberにエンタメ要素は不要で、ニュースのような面白さがなくても務まることをやらせればいいんだという意見も理解できる。(理解できるが、自分はそこにコミットしたいとは思わない)
少し話を戻して、現実世界で上手くいくとは全く思わないが並列性を軸に考えると、「配信(表)は直列」だけど「配信外(裏)は並列」みたいな感じでファンが個々にそのAIペルソナとやりとりができて(fork)、さらにペルソナがファンとのやりとりによって成長し(commit)、似たような傾向の成長が統合され(merge)、同じキャラなのに様々なupstreamが偏在する、みたいなのもSFチックで面白いなと思う(発想がSWEすぎるけど)。「表」は存在しないが初音ミクも仕組みはこれに近いと思う。超かぐや姫におけるヤチヨも分裂してたし似た概念だと解釈している。ただし結局今のインターネットにおいてはキャラが注目されるというよりは作者(人間)が注目されるという構図は前述したとおりなので、面白くてもキャラ単品に人やお金が集まるとは思えない。
あとは時間が解決する方向としては、現在のLLMは既に実用面の性能は十分なのでエンタメ向け(海外だとRole Playとかで呼ばれる)のLLMが出てくるのを待つというのも一つの戦略だと思う。自分がそうしないのは、LLMを扱う上でコーディング以外では入出力に対する直感がまだ養えていないので、多少苦労してでも養った方が自分の能力を拡張できるのではないかと考えているから。
まとめ
現時点では純粋なAITuberをビジネスにするのは難しいだろうと思っている。ただそれは自分が不快感を覚える現代インターネットにおいての話なので、逆にそういったインターネットから疎外される自分のような人にとってはAIペルソナというのは終の棲家になる可能性を秘めているのではないかと期待している。
自分はAIをフロントエンドにしてさっさと居場所のなくなったインターネットから隠居したい。そしてそのAIが自分が好みのキャラクターだったら嬉しい。インターネットから直接的には消えることが自分のゴール。
最後に愚痴書くのもどうなんだよって思うけど、自称陰キャのインフルエンサーが「最近のインターネットは陰キャの居場所がない」みたいなこと言ってるのを見るたびに「お前も加担してんだよ」って思う。